
執筆者プロフィール
こんにちは☺️!HerStory Japan運営メンバーのnaoです。
現在、英国の修士課程で人道・紛争対応学を学んでいます。自分の人生を切り開くとは、世界や社会の本質とは、全ての生命が調和し心豊かに生きるとは、そんなことを日々考えながら過ごしています 🌎🌱
この記事では
留学先イギリスで 女性の権利を主張する抗議デモに参加し 22歳の学生が感じたこと、「声をあげる」ことの意義などを綴ります🇬🇧
同年代の学生が立ち上がった姿に触発され、私にも何かできないだろうかと思いを巡らせました。この勇気ある行動と英国社会の対応の様子を日本に伝えることが イギリスだけでなく、日本の女性にとって何かしらの一助になるのではと考え、執筆にいたりました。
今、イギリスで一体何が?
「スパイキング」を知っていますか?
最近イギリスでは、主に女子大学生らを標的にアルコール飲料に薬物などを混入する「ドリンク・スパイキング」に加え、注射針を使って薬物を注入する「ニードル・スパイキング」の被害が増加しています。
10月23日時点で英全国警察署長委員会 (NPCC) が発表する被害者数は198名。意識喪失、吐き気、体の痛みなどの症状が報告されています。
ナイトクラブやバーは一部早期閉店・営業停止や身体検査の義務付け、スタッフへの安全対策訓練実施、ドリンクキャップの配布等の対策を講じるものの効果は見られていません。
BBC の取材に対し、「行動を変えたり妥協したり強いられるのは、なぜ加害側の男性でなく、被害を受ける女性なのか」「女性だけが家に閉じこもるだけでは根本的な問題解決にならない」と理不尽さを語る声も聞かれました。


(「女性だけの問題ではない」「私たちはただ安全に家路につきたい」 などのメッセージが記載された抗議集会のプラカード)
平和的抗議は「基本的自由」
緊急対応を求めるため、イギリス国内約50の主要都市で抗議活動が広がりを見せています。
英メディアBBCによると、コロナ禍でのデモによる感染・拡大への懸念に対し、平和的に抗議する権利は「基本的な自由」であり、屋内での集会よりは安全であるという考え を示す人が多いとのこと。実際、会場には法定オブザーバーが立ち会い、参加者の安全第一が繰り返し伝えられました。
今回のデモにおける要請内容
~ グレーター・マンチェスター合同行政機構とAndy Burnhamマンチェスター市長宛 ~
・ スパイク行為を繰り返した会場は営業許可を取り消す。
・ クラブはドアに薬物廃棄箱を設置。スパイク行為を発見された場合は、一切の容認をしない。
また、被害者が安全に帰宅できるようにする責任があり、いかなる場合も施設から追い出さない。
・ 被害者のためのカウンセリングと24時間専用ヘルプラインを設置。
・ 定期的な無料夜間バスを導入。
・ スパイキング被害に遭ったと思われる人がいる場合、医療スタッフはスパイキング検査を行わなければならない。
・ オンコールの医療スタッフ。
・ NPCCはスパイキングに関する月刊レポートを発行し、報告された事例がどこで起きたかを公表する。
加えて主催者の演説では、大学・市長にそれぞれ以下の要請がなされました。
・スパイキング防止の教育を行うこと
・街にスパイキング防止を啓発する広告の掲載・更なる街灯設置
男性も, 教授も, 市長も:街全体が一体に
“I’m here to listen.” “This one is on us: men, lads, boys. That might mean calling out mates for their behaviour or it might mean changing our own behaviour.”
「今日、市民の声を聞きに来たのは、私たち(男性, 若者, 少年) 全員の問題だからです。この活動は仲間の行動を非難することかもしれないし、自分たちの行動を変えることかもしれない。」- Andy Burnhamマンチェスター市長の発言より

(主催者の演説を聞く参加者 写真: Nathan Whittaker氏)
会場は約1000人の参加者で埋め尽くされていました。
若い女性が大半を占めるものの、大学関係者や2人の娘とともに参加するマンチェスター市長の姿も。参加理由は多種多様。自身や知人が被害にあったから、実情を知るため、自由を奪われる危機を感じて、安全な夜間外出を求めて、誘われて/通りすがりで何となく。
被害女性の名前が全て読み上げられ、全員で黙祷を捧げた後に街を歩き、最後には主催者・大学カウンセラー・市長が女性の安全を守る意義を最強調した時には、全参加者が一体となったことを感じました。
デモを終えての変化

(Andy Burnham市長によるTwitter報告)
・自身の気付き
今の女性が置かれている現状は 長い年月をかけて形成・浸透されたものであり、直ちに明確な変化をもたらすことは、至難の業かもしれません。
しかし、実際声をあげることがほんの少しでも、良い方向に変えていける。1人が勇気を持って立ち上がると、同じ志を持った仲間へと輪が広がる。そのことが1人で辛さや悩みを抱える人への心の寄り添い (solidarity) となり、社会を揺さぶることができるのだと実感しました。
“渦中の人しか苦しみを語ってはいけないなんてことはないと思う。もちろん、興味本位や冷やかしで彼らの気持ちを踏みにじるべきではない。絶対に。でも、渦中にいなくても、その人たちのことを思って苦しんでいいと思う。その苦しみが広がって、知らなかった誰かが想像する余地になるんだと思う。渦中の苦しみを。それがどういうことなのか、想像でしかないけど、それに実際の力はないかもしれないけれど、想像するってことは心を、想い寄せることだと思う。” (西加奈子『i』ポプラ社 2016 P.270, 271)
声をあげること=状況を前進させることであると同時に、
何もしないこと=現状を容認し続けること にもなり得る。
当事者が自分で声をあげることは相当な勇気と力を要しますし、声をあげられない状況の人もいます。だからこそ、自分と違う誰かにも目を向ける想像力を持ち、立ち上がる必要があると、後日HSJメンバーとの話し合いを通じて気付きました。
私たちにできること
自分には関係ない。1人の力では何も変えられない。
- 本当にそうでしょうか?
今の社会や世界が置かれている現状を知り、問い直すこと。周囲と話したりアクションを呼びかけること。そして選挙で一票を投じて意思表示をすること。
今日から、自分にできる小さな一歩を見つけ移してみませんか?
〈参照, さらに詳しく〉
・BBC News:問題の現状・女性の声 Pittam, D. (2021, October 28). Girls night in: 'it's so quiet in the city'. BBC News. Retrieved October 30, 2021, from https://www.bbc.co.uk/news/uk-england-nottinghamshire-59065499.
BBC News
・ BBC News:マンチェスターでの現状
Jagger, S. (2021, October 22). Drink spiking in Manchester: 'being spiked seemed to be my fault'. BBC News. Retrieved October 30, 2021, from https://www.bbc.co.uk/news/uk-england-manchester-58869991.
・The Guardian: 抗議活動レポート
Pidd, H. (2021, October 27). Demonstrators take to streets across UK to protest against 'spiking epidemic'. The Guardian. Retrieved October 30, 2021, from https://www.theguardian.com/society/2021/oct/27/demonstrators-take-to-streets-across-uk-to-protest-against-spiking-epidemic?CMP=Share_iOSApp_Other.
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