7月31日(土)、HerStory Japanは、女性教育と医学界の未来を開いた女医一号、荻野吟子を取り上げた History Salo Vol.4 を開催しました。
人権や医療分野などに関わる8名の参加者を迎え、女性教育の意義や私たち、女性先覚者の在り方などについて意見交換を行いました。
彼女の人生を通じて感じたことや学んだことを互いに共有したことで、私たちが現代社会を自分らしく生きるためのさまざまなヒントだけでなく、医療分野における女性の知識や
多角的な視点を得ることができました。
イベントのKey Takeaway
🌸困難・試練・逆境こそ人生の使命に気付き、社会を変えるきっかけに転用できる
吟子が日本で初の女医になるという自らの使命を見つけたのも屈辱や苦しみを味わったからこそであり、この経験が「同じ境遇にいる人たちに寄り添って手を差し伸べたい」という原動力になりました。
自らの利益や功名心を追求することだけでなく、同じ境遇にいる他者への慈しみや愛を持って行動することこそが、真に人を突き動かす糧となるのだということを学びました。
🌸当たり前を疑うことが学びの起点となる
人生とは自分で選択・納得をし続けることであり、教育は自分と世界をコネクトするために重要な意味を持つのではないでしょうか。吟子は女性が学問をすることは「恥」とまでされた当時の環境や「当たり前」そのものを疑い、自分を信じて実践に移すことが、結果として歴史を切り開くことにつながりました。
自ら問いを立て、学びをいかに自分ごととして吸収していくか、ということが、学問・教養の本質かもしれませんね。
🌸「1人の100歩」より「100人の1歩」
女医としてのキャリアを歩み始めた吟子が直面した現実は、医学以前に、貧困・社会制度・慣習などの根本的な問題の解決が必要だということでした。
現代でも女性が抱える課題は多岐にわたり、分野横断的なアプローチが必要であるからこそ、誰の、どんな小さなアクションでも大きな意味があるはずです。
大切なのは、いろんな肩書きや立場よりも、その人がどんな思いでどんな言葉を発信しているかだと思います。あなたの一言や行動は、誰かにとって気付きや変革をもたらすきっかけとなり、そしてその輪は次第に拡がって大きな力となります。
この思いを胸に、HerStoryは今後とも多様なロールモデルの紹介や、女性が自らのストーリーを描く勇気とスキルを提供できるよう尽力していきます☺️
* 関連書籍
今回取り上げた荻野吟子の伝記的小説である『花埋み』(渡辺淳一著) をご紹介します。
吟子は、夫からうつされた性病治療中に味わった強い屈辱と羞恥心・男性優位社会への怒り・孤独感などを医学への情熱へと結びつけ、女性活躍や権利向上の道を切り開いた女性でした。
彼女は強い女性として歴史に名を残しましたが、一方で、その裏には1人の女性の、大切な何かを犠牲にし、社会のために尽くした苦悩と代償がありました。
社会によって深く傷つけられた悲しみ、子供を産めない人生への恨めしさ、自分の弱さや脆さと向き合う辛さ、そしてそれらを包み込んでくれる、優しさや愛情への飢えなど
現代に生きる私たちと共通する苦悩をたくさん抱えながらも、自分で人生のオーナーシップを持って生き抜いた生涯でした。
女性の先覚者が受けたリアルな受難と熱い想いが、これほど一冊に詰まっている名作は他になかなか無いと思います。
魂が強く揺さぶられ、人生の指針と勇気を与えてくれる 必読の一冊です。
書誌情報
文庫
ISBN 978-4-10-117601-7(新潮社、新潮文庫、1975年6月3日)
ISBN 4-04-130710-4(角川書店、角川文庫、1978年)
ISBN 4-08-748003-8(集英社、集英社文庫、1993年3月19日)
単行本
ISBN 978-4-309-60965-2(河出書房新社、1988年9月30日)
Kindle (544円)
https://www.amazon.co.jp/花埋み-渡辺淳一-ebook/dp/B01ABSF096
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